ブラックベルト  第一章

2013.01.07 Monday 11:19
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    ブラックベルト         「魂の設計」       第一章   

     

      その子――達也が立っていた場所には、白い粉のような皮膚が溜まっていた。

     

     五歳の年中さんと聞いていたのだが、どう見ても三〜四歳の幼児にしか思えない。

     

     全身が、まるでミイラ男のように包帯で巻かれ、包帯の隙間から覗く皮膚は、いくつもの瘡蓋に覆われていた。罅割れた皮膚からは、血が滲んだ体液がこびり付いている。

     

     想像してみてほしい。蚊に一カ所、刺されただけでも、人は痒みを我慢できないものだ。

     

     全身のすべてが痒いということは、まともな精神では、いられないことを意味する。達也くんは、そんな子であった。

     

    「いだいよー、いだいよ」

     

     皮膚を掻きむしりながら、起は泣いていた。

     

    「かゆい、かゆいよー」

     

     ボリボリと音を立てて白い皮膚がこぼれ落ちる。

     

    「おかあさん、たすけて、こわいよー」

     

     この子の口から出るのは、その三つの言葉だけであった。

     

    「先生、こんな子でも、空手を習うことはできますか」

     

     起を連れてきた涙目のお母さんが、聞いてきた。

     

     年齢は三十歳前後、痩せていて、少し生活の疲れが漂っていた。髪を少しだけ染めている。

     

     俺は、数多くの子供に稽古を付けてきたが、目の前にいる達也は、とてもじゃないが、格闘技ができるとは思えなかった。

     

    「やらせてみないことには、何とも言えませんが、俺は、どのような子供であっても強くなる可能性を秘めていると思っています」

     

     母親が自信なさげに頷いた。

     

    「取りあえず稽古の時間だけでも自分に預けてください、達也くんが、強くなれるよう努力をしてみます」

     

     お母さんは達也の解けそうになった包帯を直しながら訊いた。

     

    「たつや、空手、やってみる?」

     

     起は、包帯の上から胸のあたりを掻きむしり、返事をしなかった。そこで俺は、起と同じ目線にしゃがみ込みながら訊いてみた。

     

    「たつやくん、おじさんの所で空手を習ってみるかい」

     

    「いやだー、帰りたいー、お母さん、帰りたい」

     

     今まで見たこともない熊のような大男に会って、達也は多少、パニクっている様子だった。

     

    「たつや、強くならなくては生きていけないよー」

     

     少し関西弁のイントネーションがある、勝ち気そうなお母さんは、達也を叱りつけた。

     

    「できない、やっぱり……僕は、できない」

     

     また達也は、体を掻きながら、涙目になってしまった。

     

     自信のない起の表情からは、今まで何をやっても続かなかったという母親の暗黙の言葉が読み取れた。

     

    「やれるとこまで、やってみようね。疲れたら、休んでいいから」

     

     母親と、騙し騙し、何とか空手着を達也に着せようと俺は思った。

    続きはアマゾンにて発売中です 宜しくお願い致します
    category:私小説 | by:重松 栄comments(0)trackbacks(0) | -

    小説 販売のお知らせ

    2010.08.25 Wednesday 01:44
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       iPhoneやiPad、KINDLEの普及を鑑み 自分も書きなぞった駄作を
      売ってみることにしました(笑)

      最悪の出版不況 商業出版は夢の又夢ですのでしばらくここに
      作品を出していきます

      基本的にはアマゾンのキンドルが一番売りやすそうなので
      リンクを張って参ります。


      今年は作家になろうと決意して20年
      最後のチャンスに掛けます!!

      もし、宜しかったら立ち読みだけでも
      宜しくお願い致します
      category:小説 | by:重松 栄comments(0) | - | -

      潮干狩りで感じたこと

      2010.06.14 Monday 00:17
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         本日、夢中になって潮干狩りを致しました
        海岸の砂を掘って掘って掘りまくる
        最初は手応えもなく 腰と指先が痛くなるだけ
        しかし順にひとつ、ふたつと貝を見つける
        小説書きもこれに似ている
        夢中になって24時間探せば黄金色の言葉に出会える
        時には大きなハマグリにも
        とにもかくにも掘り続ける事を止めないことだ
        category:- | by:重松 栄comments(0) | - | -

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